愛していたから、壊した。
愛が強かった分だけ、めちゃくちゃにしてやった。
愛しくて愛しくて愛しくて。
そして、――――――憎かった。
憎かったよ。
だから、壊した。
あっという間だったね。
君は脆すぎた。
虚しいほどに。
虚しすぎて、最初は本当にこの僕がめちゃくちゃに壊してやったのかって、疑うほどだった。
脆かったなぁ。
脆くて憎くて、愛しくて。
そんな君は、とっても可愛かった。
うん。
可愛かった。
可愛くて弱くて泣き虫で僕なしじゃなにもできなくて。
そんでもって意地っ張りだったね。
ため息が出るほどに意地っ張りで、憎たらしかった。
外見が可愛かったから、憎たらしいのがより際立ったね。
でも、それでも愛した。
これは事実。
僕が今どんなに君のことを虐げ蔑み見下そうとも、変わらない、たったひとつの事実だ。
‥吐き気がするなあ。
この僕が、かつて君を愛していただなんて。
こんなに憎くて憎くて嫌いで嫌いで大ッッ嫌いで顔も見たくないほどうざったい君を。
僕は、‥愛していただなんて。
認めない。
僕は認めないよ。
過去を変えることはできないけど、拒絶してしまうことは簡単にはできる。
目を逸らせばいいだけの話だ。
君を愛していた僕は、今の僕じゃないし。
僕に愛されていた君は、今の君じゃないし。
君を愛していた証は、この世のどこにもないし。
確かめようもないし。
確かめたくもないし。
ほら。
こうすれば過去を無視できる。
簡単でしょう?
これで僕は、今を生きていける。
新しい僕のできあがり。
こんにちは。
新しい僕。
さようなら。
今までのキタナイ僕。
さあ、歩き出そう。
未来へ。



忘れ物。
君からもらった思い出の中に、心からの「笑顔」を忘れてきちゃった。
このままじゃうまく笑えないよ。
これは困った。
実に困った。
はてさて、どうしようかな。



何日も何日も悩んで悩んで悩んだ末。
僕は、狂った僕を、壊しました。
愛した君を壊した僕を、僕は、許せませんでした。
それはもう、めちゃくちゃに。
君にしてやったいちまん倍くらいに、めちゃくちゃに。
痛かった痛かった。
苦しかった辛かった。
泣きたかった‥泣けなかった。
ああ。
君も。
痛かったんだね。
苦しかったんだね。
辛かったんだね。
泣きたかったんだね。
泣けなかったんだね。
分かった。
今分かったよ。
君の気持ち。
それだけで、もう僕の心は壊れてしまいそうだ。
とっくに狂ってしまってはいるけど。
許されるなら、君に謝るよ。
ごめんね。
ごめん。
本当にごめん。
もっと許されるなら、君を抱きしめたいよ。
愛してるよ。
愛してる。
本当に愛してる。
今度はちゃんと君が壊れたりしないように、優しく包んであげるから。
一度もそうしてあげたことはないけれど。



あれ?
変だなぁ。
何も見えないはずなのに。
泣いてるの?
‥もっとへんだ。
いたみしか感じてなかったはずなのに。
あったかいなあ。
やわらかくてやさしい匂いが。
ここちい歌声。
ん。
なんだかしょっぱい。
涙のあじがするね。
だれ?
ないているのは。
ぼくじゃないよね?
きみ?
あれ?
どうして?
なかないで。
ほら。
わらおうよ。
ぼく、かこからえがおをもってかえってきたから、もうわらえるよ。
ぼくのまねをしてごらんよ。
‥わあ、へたくそ。
もっとくちをあげて。
にぃーっていってごらん。
そうそう、めもくしゃくしゃに。
‥やった。
じょうずにわらえたね‥。
‥ああ‥。
しあわせだな。



光が。
闇の中から。
生えてきた。
それだけで。
世界は。
ぐるりと。
180度。
回った。



もういちど。
きみと。
おなじじかんを。

fin.
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